草木染め基本のき⑤媒染(色止め)

草木染めを始めると聞き慣れない言葉が出てきます。
それは媒染という工程。

媒染って何だろう?

媒染とは?

媒染とは、
色素の色止めの役割と、発色に関わる工程のことを言います。

アルミや鉄、銅などの金属と色素が反応することによって、
キレート化して繊維に色素が定着することです。

それでは一つずつ説明していきます。

色素への影響

色止め効果

ほとんどの天然色素は、
繊維にただ染み込ませた状態では定着することが難しいのです。
藍染めや紅花染めなど一部の染めを除いて、
基本的にはこの媒染工程をすることによって色落ちしにくくなります。

一見染まったように見えても、
洗濯したり蛍光灯などの光によって、あっという間に色が変わっていくこともあります。

そのため、色素が繊維に固着するために媒染を行います。
ただし、天然染料で染めると、
化学染料と比べて色の変化が大きいのは変わりません。

色調の変化

色止めの役割の他に、
色素と化学反応が起こることによって、色調にも影響があります。
想像しやすいのは、炎色反応でしょうか。
金属によって色が変わるところが一緒です。
ただし、媒染は色素と金属の反応によって化合物が変化して、
その結果色調が変化します。

左からアルミ、銅、鉄媒染

一般的によく使われている媒染剤には、
アルミ、鉄、銅があります。

①アルミ
みょうばん、焼きみょうばん(硫酸アルミニウムカリウム)など

馴染みがあるのはナスの色止めとして
使われている焼きみょうばんではないでしょうか。
スーパーの漬物コーナーに置いてあったり、
薬局でも販売されていて、一番手に入りやすいものだと思います。
アルミは、色調はほとんど変化せず、少し明るい発色になります。
染液の色のまま染めたい時には、アルミを使います。



②鉄
木酢酸鉄、硫酸第一鉄など

染料店で販売されていますが、
自分で作ることもできます。

作り方を簡単に説明すると、
錆びた鉄釘を水とお酢(1:1)の液で煮詰めて、
それを1週間程度置いておく。
釘を取り出して、これを原液として適度に薄めて使う。

鉄を使うと、色調が暗くなります。
例えばアルミで黄色く染まる色素だと、茶系やグレーになることが多いです。
綿や麻に対する影響は分かりませんが、
絹に対しては、鉄媒染をすると繊維がもろくなり劣化しやすくなるということがあるようです。

一般的に、落ち着いた暗めの色調にしたい場合に使います。
注意点は少量でも色が変化するので、
媒染した後に、鉄媒染をしない布などにくっつけないようにしましょう。

③銅

染料店で染料用銅剤が販売されているので、
基本的には購入しますが、
銅媒染剤も鉄とほとんど同じ方法で作ることができます。

作り方は、
錆びた銅線もしくは十円玉を水とお酢(1:1)の液に入れて、
1週間ほど浸けておく。
銅線(十円玉)を取り出して原液として適度に薄めて使う。

銅を使うと、色調は茶味が強くなり、
緑染めという染色をする時に使われます。
ちなみに、草木染めで綿や麻を一つの植物で、
緑色に染めることは難しいのです。
緑染めの講習会を受講した時の話はこちら

媒染剤種類

前項で、アルミ、鉄、銅と出てきましたが、
その他の重金属としては、チタン、錫、クロムなどがあります。
ただ、環境負荷などを考慮すると、
一般的に使うのはアルミ、鉄が多いと思います。

金属以外にも、
草木灰や、石灰、重曹などのアルカリ。(正確には灰の中に含まれている金属の影響も。)


米酢やクエン酸による酸を使う方法もあります。

媒染剤には色々な種類があるので、
染める植物を変えなくても、
同じ染液を使っても、媒染剤を変えることによって、
色調を変えることができるが草木染めの醍醐味とも言えます。

媒染のタイミング

この媒染という工程を、
いつやるのが正解なのか、未だに分かりません。
なぜならば、使う染料や繊維の種類などを加味する必要があるからです。

自分が染める時には、
下記に出てくる②中媒染で染めることが多いです。
媒染のタイミングは4パターンあります。

先媒染(媒染→染色)
染料に浸ける前に媒染をするので、
繊維の表面に媒染剤が付いているので、一見濃く染まっているように見えます。
手軽に濃く染めるには良いですが、色落ちしやすい可能性があります。

中媒染(染色→媒染→染色)
このやり方をする時は、一度で染めるというよりは何度も染色液と媒染液を
繰り返して染めていくことが多いです。

後媒染(染色→媒染)
このやり方だと濃く染めることが難しいかもしれません。
そして、余分な媒染剤が付いているので、
取り扱いに気をつけて、染めてからすぐによく洗い流した方が良いです。

その他
染色液と媒染剤を合わせた同浴媒染。
私はやったことがありませんが、時々出てくる媒染方法です。
染色液と媒染剤が反応して沈澱しないのか、
染まりはどうなのか分からないところですが、
そんなやり方もあります。


今回は媒染についての話でした。
染料に使う植物以外にも色を変えることができるので、
色々試してみると面白いですよ。

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